経済学にも求められる
統合的な人間像の提示:
合理的なヒト、それを超える人間
『心は遺伝子の論理で決まるのか - 二重過程のモデルでみるヒトの合理性』
キース・スタノヴィッチ著、椋田直子訳、鈴木宏昭解説/みすず書房、2008年
(The Robot's Rebellion, Keith E. Stanovich, 2005)
評者:瀧澤弘和(VCASIフェロー、多摩大学教授)
概要
20世紀から21世紀にかけて、ヒトの心のあり方に関して進化論的アプローチが適用されるようになり、われわれの人間観が大きく変容しつつある。そこで新たに浮かび上がってきた人間観は、かつての社会科学が当然視してきたような自律的・意識的な意思決定を行うヒトではなく、進化の法則にしたがって形成されてきた心を持つ人間である。進化論的決定論が勢いを増している時代に、人間存在はどのようにその意味を復権させることができるのか。本書は、その壮大なテーマに認知心理学者が取り組んだ成果である。
本書の核心は、個別にはよく知られた上記の利益相反の構図の上に、最近の認知科学によって明らかにされつつあるヒトの合理性のさまざまな類型に関する議論を重ね合わせてヒトの合理性の固有の意味を探ろうとしている点にある。