Language: 日本語 English

一般交換

Author(s): 
山岸 俊男 ・ 清成 透子
日付: 
Wed, 2007-08-01
Abstract: 

人々は多くの場合,自分の属する集団の成員である内集団成員に対して,それ以外の人たちに対してより協力的ない し利他的に行動する,「内集団ひいき」ないし「内集団協力」の傾向をもっている.また,内集団成員に対してより強い信頼を示す「内集団信頼」の傾向ももっ ている.本章の目的は,これらの内集団ひいき,内集団協力,内集団信頼を生み出す心理メカニズムについての,山岸を中心とする研究グループが過去10年に 亘り進めてきた研究の成果を紹介し,集団との心理的同一化にこれらの傾向の原因を求める社会的アイデンティティー理論による解釈の誤りを指摘することにあ る.これらの研究を通して得られた一般的結論は,内集団ひいき,内集団協力,内集団信頼などの行動は,集団内部に存在する一般交換システムのもとで適応的 な行動として理解できる,という点にある.

Author(s): 
清成 透子 ・ マーガレット フォディー ・ 山岸 俊男
日付: 
Wed, 2007-08-01
Abstract: 

本研究の目的は,信頼の内集団バイアス行動,すなわち,外集団成員よりも内集団成員に対してより強い信頼行動を 人々が示すのは,分配委任ゲーム状況のみであり,信頼ゲームではそういった内集団信頼は生じないことを明らかにすることにある。この予測を確認するため に,日本人参加者79名,オーストラリア人参加者83名を用いて二つのゲームを比較した実験を実施したところ,本研究の予測通りの結果が得られた。本研究 の予測は,内集団ひいき行動や信頼の内集団バイアスは集団内での一般互酬性への期待に基づいて生じることを示す山岸とその共同研究者達の知見から導かれて いる。さらに本研究では信頼ゲームに内在する直接交換の側面が人々に一般交換の期待を抱くのを阻害し,その結果,集団内部の互酬性に対する期待を抑圧する 可能性についても論じている。実験の結果,信頼ゲーム条件では,82名中28名の参加者が内集団分配者を信頼し,29名が外集団分配者を信頼した。これに 対して,一般交換の期待が内包されている分配委任ゲームでは,80名中47名が内集団分配者を信頼し,外集団分配者を信頼したのは37名であった。また, 本研究では日本人とオーストラリア人参加者の間に文化差は認められず,内集団バイアス行動が,従来の社会心理学で議論されているような内集団ステレオタイ プからではなく,一般交換に対する期待が内集団信頼を生み出す源であるという山岸らのこれまでの知見が日本文化特有であるという可能性を否定し,山岸らの 議論のより一般化可能性を示唆するものでもある。

Author(s): 
三船恒裕 ・ 牧村洋介 ・ 山岸俊男
日付: 
Wed, 2007-08-01
Abstract: 

内集団ひいきの説明原理として,社会的アイデンティティー理論が幅広く支持されているが,その説明力の限界が指 摘されており,近年では閉ざされた一般的互酬性の期待仮説(Yamagishi, Jin, & Kiyonari, 1999)が代替案として提案されている.しかし,Yamagishi et al. (1999) の理論は最小条件集団の結果のみを基盤としており,実在カテゴリーで構成される集団への一般化可能性を検討する必要ある.そこで,実在カテゴリーとして国 籍を用いて,神・山岸(1997)の囚人のジレンマ実験を実施した.結果は,外集団成員に対してより協力的に振舞う,つまり外集団ひいきが観察された.こ の結果は上記の両理論から導き出される予測とは異なり,最小条件集団実験を基盤とした理論を安易に他のパラダイムへ一般化することの危険性を示唆するもの である.さらに,事後質問と協力行動の分析から外集団ひいきの原因を推察する.