Language: 日本語 English

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Author(s)

川越敏司

Published Date

Thu, 2007-11-01

Publisher

東京大学出版会

Abstract

本書の構成は以下の通りである. 第2章では, 実験経済学の原理と方法について述べ, 実験経済学の方法論上の特徴が被験者の選好統制という側面にあることを明らかにし, 実験経済学の研究において標準的に用いられている様々な選好統制手段とその理論的根拠を詳細に記述した. 中でも, 実験経済学の基本原理とも言うべき価値誘発理論, くじによる危険回避度の実験統制, BDMメカニズムによる危険に対する態度の測定, プロパー・スコアリング・ルールによる主観確率の測定などについては詳しく説明を行っている. 第3章では, ゲーム理論実験を紹介している. ゲーム理論の体系的順序に従って, 支配戦略からはじめて, 支配される戦略の逐次消去, ナッシュ均衡, サブゲーム完全均衡, ベイジアン・ナッシュ均衡, 完全ベイジアン均衡に至るまで, ゲーム理論の主要な解概念にかかわりの深い実験を紹介した. その際, 公共財や逐次交渉など,比較的現実的で身近な意思決定状況を取り上げたので, 本章は学部レベルのゲーム理論の授業における実験演習教材としても用いることができるだろう.これまでの実験研究において観察されたナッシュ均衡やサブゲーム完全均衡からの逸脱を説明するために, 公平性と互恵性といった利他的選好にもとづくゲーム理論や, 学習・進化といった側面を取り入れた限定合理性にもとづくゲーム理論が近年発達している. これらは一括して行動ゲーム理論(Behavioral Game Theory)と呼ばれるが, 第4章では, 特に囚人のジレンマ・ゲームや交渉ゲームなどの具体例を取り上げて, これらの理論の紹介を行う.最後に, 第5章では, 最近実験経済学に対して寄せられている様々な批判を取り上げ, それに対する実験経済学側の回答を検討する. また, Camerer (2003)が提示した「実験経済学における10大未解決問題」を題材にして, 本書で追求した論点を織り込みながら, 実験経済学の将来について論じる. その中で, 均衡理論や学習理論において, プレーヤーの均衡行動がその確信と整合的になっていないという問題や, 実験経済学の基本原理である選好統制の徹底が社会的状況に埋め込まれた人間行動の本質を見失わせる危険性もあることを指摘する. これを受けて, 過去の類似した事例の経験を生かす事例ベース意思決定理論 や, 行動と確信との不整合性を明示的にモデル化する帰納的ゲーム理論や自己確証均衡 を取り上げ, さらに実験経済学の今後の展開にとって, 進化的に形成されてきた制度や社会規範が人間行動に影響を与えていること直視し,実験室環境に制度や社会規範の形成過程を取り込む新しい方法論が必要であることを述べる.


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