続いて,当日の報告の前半として,瀧澤弘和フェローからAbdulkadiroglu and Sonmez (2003)に関する報告が行われた.この論文では学校選択問題を学校と学生のマッチングの問題として定式化し,学生たちが虚偽の申告を行わないような割当メカニズムとしてゲール=シャープレーメカニズムとトップ・トレーディング・サイクルメカニズムを提案し,その性質を理論的に分析している.前者のメカニズムは,優先順位の高い学生が優先順位の低い学生が割当てられている学校を望むという「正当な羨望(justified envy)」を消去するような他のメカニズムをパレート支配することが示されているが,一方で実現する結果がパレート効率的であるとは限らない.逆に後者ではパレート効率的な結果が実現するが正当な羨望を除去できるとは限らない.したがって,正当な羨望の除去と効率性のどちらを優先するかによって望ましいメカニズムが変わってくることになる. (報告資料)
以上の理論的背景を踏まえ,渡邊泰典氏からゲール=シャープレーメカニズムとトップ・トレーディング・サイクルメカニズムの性質を実験を用いて分析した二本の論文に関する報告が行われた.Chen and Sönmez (2006)は学生の学校に対する選好の分布の変化が,実現する結果にどのような影響を与えるかという観点から実験およびシミュレーションを行っている.その結果,理論的な含意とは逆に,ゲール=シャープレーメカニズムの方がトップ・トレーディング・サイクルメカニズムよりも効率的であるという結果を示している.特に,学生の選好の間の相関が弱い場合においてこの差が顕著であった.二本目のPais and Pintér (2008)では,割当てられるエージェントが他のエージェントや学校について持っている情報の量が実現する結果にどのような影響を与えるかを分析している.ゲール=シャープレーメカニズムでは情報を持たないときの方が効率的になるが,トップ・トレーディング・サイクルメカニズムでは情報の差は効率性に影響せず,情報が多い場合には他のメカニズムよりも効率的であった.(報告資料)
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