
日時:
2008年4月21日 午後4時半~午後6時
場所:
東京財団A会議室(虎ノ門日本財団ビル3F)
発表者:
上柿崇英氏(東京農工大学大学院)
タイトル:
「了解的コミュニケーション」と「共同的コミュニケーション」の社会理論:
ハーバーマス「コミュニケーション的行為」論の進化心理学的再構成
概要:
ハーバーマスの「コミュニケーション的行為論」の中では、コミュニケーション
類型として、「成果志向のコミュニケーション」、「了解志向のコミュニケー
ション」が区別される。彼の位置づけでは、前者は“物象化”されたコミュニケー
ションであり、後者こそが“文化的再生産”や社会統合、そして人間形成の機能と
いった、人間にとって重要な役割を果たすとしている。
しかしコミュニケーションの「了解モデル」は、コミュニケーション的合理性に
基づく“討議”のパターンに根ざしており、人間存在にとってもう一つの統合的な
コミュニケーションである、「共同的コミュニケーション」の存在が考察の対象
になっていない。これは了解のプロセスではなく、義理や感情、仲間意識から生
じるもう一つの統合的なコミュニケーションである。
ここでは「了解的コミュニケーション」と「共同的コミュニケーション」は
まったく質の異なる統合様式として、考えてみたい。おそらく前者は、合理性に
根ざすが故に、「関係性」が抽象的で間接的であっても機能する、「正義の論
理」にもとづくものである。他方後者は「心の理論」に根ざすが故に、「関係
性」が具体的で直接的な関係である場合にのみ機能する「ケアの論理」に基づい
ている。“正義”と“ケア”の中心には、ともにある種の“責任感情”の一形態が結び
ついているが、両者が導出される脈絡は、人間学的には異なるプロセスである、
と考えられないだろうか。
今回の報告では、なぜこの二つの様式が区別されうるのか、また、この区別を
行うことによって、ハーバーマスの社会理論をどのように組み替えることができ
るのか、という論点について、進化心理学的な視点を導入しながら考えてみてみ
たい。