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VCASIセミナー

2010年7月8日(木) 17:00-
日本財団ビル2階第8会議室
山口一男(VCASIフェロー・シカゴ大学・経済産業研究所/http://sociology.uchicago.edu/people/faculty/yamaguchi.shtml)
川口章は近著『ジェンダー経済格差』で経済における男女格差が埋まらない原因をゲーム理論における戦略的補完性の概念で説明を試みている、私は近著『ワークライフバランス 実証と政策提言』でわが国において男女共同参画が進まない理由を、女性への統計的差別が経済的に非合理でありながら、その非合理を解消しにくい構造があることにより示した。今回の発表はこの2つの考えを統合する形で、特に女性のネガティブ・ステレオタイプに2種の予言の自己成就的メカニズムがあること、予言の自己成就が成立するには一定の条件があることを示しながら、他の制度との戦略的補完性を持つため解消が難しいと考えられる女性の統計的差別について、その解消の道筋を議論する。
2010年7月6日(火) 17:00-20:00
日本財団ビル3階A会議室
宮崎広和(コーネル大学人類学科・東京大学社会科学研究所)
司会:青木昌彦(VCASI主宰)
コメンテーター:神山直樹(ドイツ証券)
コメンテーター:春日直樹(一橋大学)
 昨今の金融危機で「ウォール街の文化」、すなわち米国投資銀行で働く人々の行動パターンと倫理に注目があつまり、現在様々な議論が展開されている。議論のひとつの焦点は、投資銀行におけるインセンティブのあり方である。これは非常に重要な視点であることは間違いない。しかし、こうした議論の前提となっている人間像は、合理性と情動のはざまを生きる個人であり、さまざまな関係性によって構成されるより多元的な現実を生きる実際の人間とはかけはなれた、単純化された人間像である。世界中で多くの人々に犠牲を強いた今回の危機は、より現実的な人間像にたった市場とその規制のあり方を考える絶好のチャンスである。
1990年代後半以降ミシェル・カロン、カリン・ノール=セティナ、ドナルド・マッケンジーらヨーロッパにおいて科学社会論(Social Studies of Science)をリードしてきた社会学者たちは、科学から金融へと分析の視点を移し、文化人類学者や人文地理学者とともに金融社会論(Social Studies of Finance)という学際的なフィールドを構築した。このフィールドの特徴は、金融市場を、金融(経済)理論、コンピューター技術、数式、文書、さまざまな制度的・組織的要素、そして身体・情動・思考を持つ生身の人間のネットワークとして構築されたものと理解することである。このように金融社会論は、新古典派金融論とも、行動金融論とも異なる立場から、金融市場のさまざまな側面に関する実証的研究を展開してきた。例えば、マッケンジーは、オプションのプレミアムを算出するブラック=ショールズ式に基づいた計算手法をオプション・トレーダーが共有しトレーディングに使用することによって、オプション市場がブラック=ショールズ式に合致するように動き始めた過程を分析している。
この学際的フィールドに初期から参加した私は当初から、金融社会論にマリノフスキー、モース、ポランニー以来の経済人類学的視点にもとづいたより広い経済観・市場観を導入するよう努めてきた。今回のセミナーでは、金融社会論のこれまでの成果を紹介しながら、現代金融理論の中核をなし、金融商品のプライシングやトレーディングの基本的手法として確立しているアービトラージ(裁定取引)とそれに内包されたさまざまな理論的・技術的・社会的要素に焦点をあてる。具体的には、1987年以降東京のある大手証券会社の自己売買部門で先物やオプションなどのデリバティブを使ったアービトラージに携わってきたトレーダーたちのキャリア(金融実務とそれに付随したさまざまな知的営為の軌跡)を分析し、アービトラージ的手法と思考が、日本の制度的・組織的要素との関係のなかで、過去20年余の日本のデリバティブ市場とデリバティブ・ビジネスの展開にどのような意図され、そして意図されない影響を与えてきたか検討したい。そして、この事例を通じて、金融理論、金融技術、そしてそれらを扱う人々の行動、思考、想像力こそが金融市場そのものであり、今後の金融制度改革の議論の進展のためには、市場と市場行動をより広角にとらえる視点が不可欠であることを示したい。
2010年6月23日(水)18:30-
日本財団ビル3階A会議室
塩沢由典(複雑系経済学、進化経済学/中央大学商学部、VCASIフェロー)
川越敏司(討論者)(実験経済学/公立はこだて未来大学、VCASIフェロー)
所得税の体系(スキーム)がいかにあるべきかに関して、これまで最適所得税という形で考察されてきた。その視点は、勤労・事業意欲を損なわずに税収を上げるには、個人の最高限界税率をどのくらいにすべきかにあった。本報告では、これとは異なる観点にたつ個人所得税体系の提案である。現在の日本のような需要飽和経済では、所得の上昇にともない消費需要が比率的に低下し、それにより成長が抑えられるというメカニズムが働く。経済の長期閉塞の一因がここにあると考えられる。成長中立的所得税制は、このようなメカニズムから自由な所得税体系である。本報告は、所得税体系を適切に組むことにより、政府最終消費が自動的に調節され、所得上昇が成長を抑制しない成長中立的な税制が得られることを示す。
2010年5月10日(月)19:00-
日本財団ビル2階会議室1(http://www.vcasi.org/access.html)
安藤馨(法哲学、規範理論/東京大学大学院法学政治学研究科)
本報告では、社会に於ける諸個人の個別の行為ではなくその全体が織りなす行為パターンとしての制度・社会規範といった対象が規範理論的・政治哲学的に正当化されるということがどういう事かを改めて整理し、更にその応用として帰結主義的規範理論(なかんずく功利主義)が社会規範をどのように位置づけるかに関する基礎的な議論を試みたい。この作業は、功利主義を初めとする帰結主義理論の下で、立法などの統治的行為・国家介入によって社会規範を執行し維持し或いは改変し或いは破壊することが果たして正当化されうるか、そうだとして、どのような介入が正当化されるか、を論ずるための基盤となるべきものである。

上述のような議論を踏まえつつ、特に、(消極的)自由や自律に内在的な価値を認めない功利主義の下で、どのような統治が正当化されうるかを改めて確認しつつ、時に「アーキテクチュア的統治」として大雑把に括られがちな統治の諸様態について概念的分節化を行うことで、統治に於ける社会工学の規範的基礎がいかなるものであるかを議論していくことにしたい。
2010年4月22日(木)17:00-18:30
日本財団ビル3階A会議室
井上明人氏(国際大学グローバル・コミュニケーション・センター/ルドロジー、情報社会学、コンピュータ・ゲーム産業論/http://www.critiqueofgames.net/)
コンピュータ・ゲームは、人の適応のメカニズム自体と、深く関わる形で発展してきた。本発表では、まず第一にエンタテインメントのために発展したコンピュータ・ゲームが,いかに画期的な表現メディアたりえたのか,ということを示す。コンピュータ・ゲームは、Wiiに代表されるような、身体的/認知的な快楽を引き起こす装置としての側面に注目が集まりがちだが、実際には特殊なインターフェイスを通じた身体的な快楽装置としてのコンピュータ・ゲームのあり方はコンピュータ・ゲームの可能性のほんの一部分でしかない。その上で、コンピュータ・ゲームがなぜ特異なメディアとなりえているのかを、特にコンピュータ・ゲームにおける「説明」という要素に着目して、議論を展開する。簡単に言えば、「洗練されたコンピュータ・ゲーム」とされるものは、そのほとんどがコンピュタ・ゲームの内部の環境へと高速に適応できるような仕掛けをそなえている。よくできたコンピュータ・ゲームとは、人工環境への適応をブーストさせる装置として優れた仕組みを鍛え上げきた。その仕組みとは具体的にはどのようなものなのか、を示す。
以上のような問題から、質疑応答を通して、依存、適応、学習、ナラティヴ、一回性、人の解釈システムといった概念についてまで議論を広げていければと思う。
2010年4月12日(月)18:00-21:00
日本財団ビル3階A会議室
鈴木健氏(東京大学大学院総合文化研究科/情報社会学)
情報技術を用いて、この社会をバージョンアップすることを試みたい。活版印刷技術が数百年かけて近代社会に様々な革命をもたらしたように、コンピュータやインターネットの登場は、社会に革命的な変化をもたらすと言われてきた。しかし、インターネットが社会に広く利用されるようになって15年たつが、未だにこうした変化は起きていない。これはむしろ当然ともいえる。アラン・ケイの言う通り、300年スパンでしか本質的な変化は起きないのかもしれない。本研究では、アラン・ケイの「未来を予測する最良の方法は未来を発明することである」という有名なテーゼに基づき、社会システムを発明することを試みる。具体的には、貨幣システム、投票システム、軍事システムなどがその対象となる。伝播投資貨幣PICSY、分人民主主義 divicracyといった発明がどのように国家、組織、個人といったものの仮想化を支えていくか、理論、数理モデル、思想、分析、背景などを含めて総合的に議論する。近代社会を成立させた私的所有、自他分離、友敵区別の概念を乗り越えることによって、近代社会の単なるマイナーバージョンアップではなく、メジャーバージョンアップを目指したい。

2010年4月1日(木)10:00-
日本財団ビル3階A会議室
山岸俊男(北海道大学大学院文学研究科/社会心理学、実験社会科学)
 
2010年2月8日(月)
日本財団ビル3階A会議室
瀧澤弘和(中央大学経済学部、東京財団)
(下記、レポートに掲載)



2009年12月18日(金)18:30-
日本財団ビル2階第1,2会議室(http://www.vcasi.org/access.html)
川﨑政司先生(慶應義塾大学/立法学、立法実務)
これまでの立法のあり方等にかかわる問題点を確認した上で、政治主導と立法に関し、そこにおける「政治」の意味と役割、内閣中心構想の憲法的限界、政と官の関係のあり方、内閣法制局をめぐる議論、法的な質の確保の必要、政府と与党の関係、国会審議のあり方と与党議員の役割、議員立法のあり方、国民による政治を強調する議論・動きとその現実、マニフェストの位置づけなどの諸点について、昨今の事例、改革の動きなどを踏まえながら、検討を行い、政治的なものが強まる中での立法のあり方を考える。
2009年12月15日(火)17:30-
日本財団ビル3階A会議室
谷淳先生(理化学研究所脳科学総合研究センター動的認知研究チーム/認知発達 ロボティクス)
本セミナーでは現象学的な自己のありようについて自律エージェントの観点から議論する。特に演者の一連の脳・認知ロボットの実験研究から、自己についての三つの在り様、最小自己、社会的自己、自己参照的自己について言及していく。これらの自己についての統合的な考察から、真の自己は自らの過去の回帰・反省と将来への予測の相互作用のもとに自己組織化される臨界的な状況においてのみ存在すること、そして真の自律性はそのような自己の発現が不可欠であることを示していく。