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第3回VCASI公開フォーラム『移り行く資本主義Ⅱ:日本の政党・政治システムの制度変化』報告

日時:   2008年7月16日(水) 15:00~18:00
場所:   日本財団ビル2F 大会議室
参加者:  青木昌彦(VCASI主宰、スタンフォード大学)
                 ジェラルド・カーティス(VCASIフェロー、コロンビア大学)
                 加藤秀樹(東京財団会長)
                 河野 勝(VCASIフェロー、早稲田大学)
                 前原誠司(民主党衆議院議員)
                 清水真人(日本経済新聞社編集委員)
                 与謝野馨(自民党衆議院議員)
コーディネーター:  加藤創太(VCASIフェロー)



第三回VCASIフォーラム「移り行く資本主義Ⅱ:日本の政党・政治システムの制度変化」が7月16日に日本財団ビルにおいて開催された。本フォーラムの趣旨は「有権者の意識の変化、経済や社会でも並行的に進む制度変化とのリンケージ、といった制度論的な観点を加味した上で日本政治の現状を概観し、『ねじれ国会』、ポピュリズム、二大政党制、などの本質を見極めた上で、今後の方向性について模索しようとするもの(フォーラム案内より)」であり、200名に及ぶ聴衆が会場に訪れた。

当日は、河野勝フェロー(早稲田大学)、青木昌彦主宰(スタンフォード大学)、ジェラルド・カーティスフェロー(コロンビア大学)によるプレゼンが行われた後に加藤創太フェロー(国際大学)が論点を整理し、それを受けて与謝野馨議員(衆議院)、前原誠司議員(衆議院)、加藤秀樹会長(東京財団)、清水真人編集委員(日本経済新聞社)の各氏がコメントを行う形で進行した。

最初の加藤秀樹東京財団会長の開会の挨拶では、ウェブ上でバーチャルに議論を行うVCASIとリアルに議論を行う今回のようなフォーラムの関係について簡単に紹介が行われ、フォーラムのテーマとなっている制度について、法律で決められたものだけでなく慣習などを含むより広い概念であるとの見方が提示された。

 


 



引き続き3人のディスカッサントによる論題提起のプレゼンテーションが行われた。
河野勝フェロー(早稲田大学)は1990年代以降の日本政治を考える上で、1993年から1994年に行われた選挙制度改革が避けて通れないとし、選挙制度と政党制の関係を述べたデュヴェルジェの法則など、選挙制度と政治の関係をめぐる話題を提供した。ここで重要な点として、有権者や政治家も戦略的に行動すること、選挙制度も他の制度と絡み合っていることから単独では評価できないことなどが挙げられた。

 


 



青木昌彦VCASI主宰(スタンフォード大学)は司馬遼太郎の「国のかたち」という言葉を借用しつつ、国家という言葉が意味するものを単に国の権力とするのではなく、政府と民間主体の間の関係を含むシステムとする見方を示した。その上で、近年の日本の国のかたちについて、欧米式の民主主義とは異なる「仕切られた多元主義」とでもいうべき性質を持っていたものが、様々な環境変化や小選挙区制への移行によって維持可能でなくなったとした。今後の日本の制度体系については、こうした国のかたちは経済制度とも相互に関係する制度補完性があることなどから、変化を終えるには1世代=30年かかるのではないかという見通しを示した。

 


 



ジェラルド・カーティスフェロー(コロンビア大学)はまず55年体制の特徴として、官僚と政治家、官邸と与党、派閥間、与党と野党、政府とマスコミなど様々なパワーセンターの間の調整メカニズムがうまく働いていたということを挙げ、これが近年崩れてきていることを指摘した。その理由については、自民党と官僚組織の関係が変わることで政治家と官僚の調整メカニズムがうまく機能しなくなったこと、国民の価値観の変化や共同体意識の崩壊によって派閥の機能が低下していることを挙げた。さらに、今の政治は官僚を叩くことに懸命になっているがその先が見えないとし、リーダーが「ねじれ国会」など今の政治の現実を受け入れて戦略を持つことが必要であるとした。

 


 



3人による論題提起を受けて加藤創太フェロー(国際大学)は論点の整理を行い、55年体制においては「仕切られた多元主義」が大きな意味を持っていたこと、様々な変化により部分均衡から全体最適を模索する必要が生じる中でそのままでは対応できなくなってきていることを指摘し、今後は政府、政党、与党、野党の間の調整メカニズムがどのように変わってくるのかがポイントとなるとした。さらに、こうした制度の変化を見る上で重要な評価視点として、選挙制度、競争と協調、横型機能という3つを挙げた。

 


 



論題の提起および整理を受け、それぞれのディスカッサントがコメントを行った。

与謝野馨議員(衆議院)は政党の数は国民の価値観に対応しただけあっても良いのではないかとし、二大政党制に否定的な見解を示した。特に小選挙区制については、各候補者にとって党の公認をとることが最優先となり、新しい人が政治に入ってくる道を閉ざしている可能性があると指摘した。さらに民主党もいずれ既成政党になる中で、同じ弊害が出てくるのではないのかという見通しを示した。

 


 



前原誠司議員(衆議院)は与謝野議員のコメントに対し、自身が91年に京都府議会に初当選した頃の話題を出しながら、政治改革に関心をとられすぎ財政の議論を放置してしまったことが現在の日本の問題につながっているのではないかという見方を示した。さらに、政治と金の問題が生じる原因は政権交代が起こらないからであり、その実現のためには小選挙区制は悪い制度ではないとした。一方で、小選挙区制の下で地元誘導型の政治が行われることを防ぐために、地方分権を今以上に行うことが重要であると指摘した。

 


 



清水真人編集委員(日本経済新聞社)は選挙改革について小選挙区の導入が大きなインパクトを与えた一方で、参議院や地方については置き去りになっているとした。さらに、政党をめぐる規律が整っておらず、候補者の選択ルール、党首の選び方、マニフェストなどが有権者から手の届かないままになっていること、行政改革についても同様の問題が存在し、与党の事前審査など法律とは無関係な慣行が存在し、これが政党の自律に委ねられていることを指摘した。

 


 



加藤秀樹会長(東京財団)は政治家や政党に対し、リアリティから離れた議論を行っているのではないかという疑問を呈し、世論の反応に神経質になることなくどこに軸足を置くかもリアリティと同様に重要であるとした。さらに、議院内閣制の基本として政党のガバナンスが重要であるにもかかわらず、政治のガバナンス、政党のガバナンスという議論が少ないこと、ルールが整備されていないことを問題として挙げた。また政策マーケットにおける競争という視点を示し、政策のスクリーニングを行う鑑識眼が政治家には必要であると指摘した。

 


 



以上の論題提起とコメントを終えディスカッサント全員によるディスカッションが行われた。そこでは仕切られた多元主義に関連して、必要とされる問題解決の仕組みが変化していくとき官僚組織・行政組織をどのように変化させるのか、政治家のリアリティとポピュリズムの関係、野党議員と官僚の間の関係、政治家のリーダーシップ、政治のビジョン、政治と選挙制度の関係など幅広い論題に議論が及んだ。

 


 



会場の聴衆も含めた質疑では今までの議論をふまえて、政治家のリーダーシップと官僚組織の関係、民主党の外交政策、政策形成における専門家の役割などについて短い時間ながら活発な議論が行われた。


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