Language: 日本語 English

主宰挨拶 2010



(c)Alexandre Wimmer

3つの壁を越える
コミュニケーションの「場」の創造

青木昌彦

 

  
 

 私どもが東京財団の研究プロジェクトのひとつとして、VCASI*  (“ヴィカシ”と読んでください) という試みを始めたのは、2007年の4月、そのウェブサイトを開設したのは同年9月でした。いわば知的ベンチャーとでもいうべきこのプロジェクトを始めてから3年たったことになります。ここで最近の活動を報告するとともに、改めてわれわれの狙いを述べさせていただき、引き続き皆様からのご支援をお願いする次第です。

(以下、文中の氏名は敬称略)

* VCASI というのはVirtual Center for Advanced Studies in Institution の略称です。日本語訳は、とりあえず仮想制度研究所、あるいは略して仮想研と呼んでいます。

VCASIの基本的な問題意識

 VCASIの基本的な問題意識をひと言で述べると、次のようになります。金融危機後における世界秩序再構築の模索や政権交代に象徴される日本の制度変化のただ中にあって、公共政策の研究や立案には、場当たり的な対応や既往のモデルの適用では不十分であり、社会制度の本質やその進化可能性に関する科学的な理解とのインタラクションがますます必要になっています。VCASIではそういうインタラクションへの貢献を企図して、三つの壁を乗り越えるコミュニケーションの「場」の創造を試みています。その三つの壁とはすなわち、

(1) 経済学、政治学、法学、社会学、歴史学などの人文社会科学分野と認知科学、進化論、脳科学、ロボット工学などの生物科学分野の間にある分野間の壁や、研究者の所属組織の地理的・文化的な壁;

(2) アカデミア(理論)と社会(公共政策の形成やその対象となる現場)の間にある相互作用・理解の壁;

(3) 世代間にあるコミュニケーションの壁

 です。

 こうした壁を乗り越えるために、VCASIではこれまで次のような活動を推進してきました。

 

 まず様々な分野で最先端の研究を行っている研究者=フェローたちによる学際的な交流を通じて,根底にある問題意識の交流をはかるため、パブリック・フォーラム、異分野をまたいだ研究コンファレンス、実験的・創生的なワークショップ、政策形成・実施現場との対話など、伝統的な、顔の見えるリアルなコミュニケーションの場の創出だけでなく、最新の情報技術を活用したバーチャルなコミュニケーションの場の可能性を探求してきました。それは絶えず進化を続ける情報技術をそのまま取り入れるのではなく、時間や空間の壁を乗り越えるコミュニケーション方法の工夫も独自に重ねてきています。(後述するフォーラムや研究会の動画中継やアルカイブ化、VCASI フェローやフレンズの間のコミュニケーションを促進する社会ネットワーク・サービス(SNS)の設計と活用など)

 

 また柔軟な思考とエネルギッシュで開拓的な研究志向をもつ若手の活用と育成にも力を注いでいます。その一環として大学の学部生・院生、民間の研究者など資格を問わず採用したアシスタントに、VCASIの研究活動の企画・実施に積極的にかかわってもらうとともに、VCASIの目的や活動に関心をもつ人たちを選考の上、Friends of  VCASIとしてネットワーク化してきました。フレンズの数は2010年になって飛躍的に増えています(2010年3月末現在 約100人)。彼らは、さまざまな研究会にバーチャルあるいはリアルに参加するとともに、「仮想研究所」というSNSへの参加資格も与えられ、必ずしも大学だけでは得られない知的刺激に接する機会となっています。

2009年度の活動と成果

 こうした場の構築は、それ自体が目的ではなく、大風呂敷を広げていえばポスト金融危機における世界秩序の再構築や日本の制度改革に関わりのある、新鮮で、上質な議論を活発にすることで初めてそれが実質的なものになることは言うまでもありません。以下では、VCASIが具体的に取り組んできた活動についてご紹介いたします。

コーポレーション、そして『会社と家族の間で』へ 

 金融危機後の世界秩序再構築の大きな課題が、金融市場の在り方、金融業と非金融業の関係についての根本的な再検討であることは言うまでもありません。VCASIは2009年3月に開催した公開フォーラムで「コーポレーションの本質(集合的認知システムという側面から)」、「社団組織・思想の比較歴史」、「経済危機はコーポレート・ガバナンスに何を示唆するか」という基本的な諸問題について、13人のフェローと2人のゲストスピーカーと共に議論を行いました。私はそこで生まれた問題意識をさらに深めて、VCASIの運営委員(Steering Committee)の助力を得て、Corporations in Evolving Diversity: Cognition, Governance and Institutionsという著作にまとめました。コーポレーションという法概念は、 歴史的に、カトリック教会や大学などというかたちで、事業会社や近代主権国家の成立に先立って登場しました。そういう歴史的認識に依拠すると、コーポレーション一般の本質は認識・物理的活動の個人的能力や個体存続の限界を越えて活動する、自己組織的・統治的な社団と言うことにある、ととらえることが出来ます。本プロジェクトでは、このような基本認識にたって、現代の事業会社の集団的認知システムとしての側面に焦点を当て、そのアーキテクチャーの5類型を抽出し、さらにそれらのガバナンスや金融市場との関係の在り方について分析・提言しました。また会社の社会や政治とのかかわりについても、ゲーム論にもとづく視座から、会社の社会的責任(CSR)や、会社組織のグローバルな多様化と日本、ドイツ、フランスなどの政治制度の進化との補完的役割についても分析しました。この著作は、2010年4月にオックスフォード大学出版局から出版され、また日本語版もVCASIが主催する〈叢書 制度を考える〉(詳細は後述)の一冊として出版されることになっています。この著作のパースペクティブ(着眼点)からもおわかりいただけるように、このプロジェクトは、経済学者はもとより、社会学者、認知科学者、法学者、歴史学者などVCASIにおける幅広いネットワークにおおいに負っていることは言うまでもありません。また、この研究結果の一部は、国際的にも、世界銀行の2009年度〈年次開発経済研究コンファレンス〉や中国国務院発展中心主催の〈2010年度中国発展フォーラム〉でも発表され、注目を浴びました。またそのガバナンス理論は、現在日本でも議論の始まった「研究開発法人」の設計にあたって、ヒアリングの対象ともなりました。

 上述の2009年3月のコンファレンスにおいて、先鋭に提出された一つの問題意識は、日本のコーポレート・ガバナンスや会社のあり方を考えるにあたり、そこに働く人々と会社のあいだの関係を統合的に視野に入れる必要があるということでした。とくに経済のグローバル化や情報化による会社企業への競争的圧力、人口構成の急激な変化による人々の価値観や個々人の職業・生活履歴の多様化、その他のさまざまな要因が絡まり、従来の企業観、雇用制度、労働観は深刻な挑戦にさらされているといえます。こうしたなか、コーポレーションという集団的な活動の場と家族というプライベートな生活の場のあいだを、人々がバランスよく、統合的に生きるために、会社の組織構造やガバナンス、雇用制度はどう進化しうるか、こうしたことについて政策がなし得るのか、などのテーマをこれまでの学術的なディスシプリンの枠にとらわれずに議論して行く必要もあるでしょう。さいわいVCASIには鶴光太郎(経済産業研究所)、山口一男(シカゴ大学)などワーク・ライフバランスについて先進的な仕事をされてきた人たちがフェローとして既に参加していますが、さらに「希望学」という新しい分野を開拓しつつある玄田有史(東京大学)、宮崎広和(コーネル大学)にもフェローとして加わっていただき、議論を深めていきたいと考えています。

 これと関連した重要な問題に、社会を安定化させる信用(trust)という規範がいかに人々の間で共有化されるか、ということがあります。最近、フェローの山岸俊男(北海道大学)が行っている、信頼ゲームの実験研究について、VCASIのセミナーで伺う機会がありましたが、それによると、中国の学生のほうが、日本の学生より、他人をより信頼しているという実験結果が報告されました。この結果は、他の様々な国際比較の調査結果とも一致するのですが、このことはどう考えるべきなのでしょうか。日本人は、従来、それぞれの帰属組織(例えば会社)の内部で高い信用規範を共有してきたといえますが、コーポレーションと家族、個人の間の関係が変容するに従い、社会規範のあり方も変わっていくのでしょうか。一人っ子政策によって、伝統的な血縁におおいに依存すると考えられてきた中国の社会規範の在り方にも変化が生じつつあるのでしょうか、あるいはそういう見方は一種のステレオタイプにすぎなかったのでしょうか。ドイツからVCASIに参加しているCarsten Herrmann-Pillath (フランクフルト・ビジネス・スクール)は、中国の社会的規範の「関係的集団主義」という側面に注目し、山岸の実験と、結果の解釈に関連のある新しい知見を提唱しています。こうした問題を比較分析の枠組みで考えていくことは、今後、ますますその連関の深まっていくアジアの将来を考えていくうえで、決して無縁であるとはいえないと思います。

学校選択制のデザイン

 公立学校への進学を希望する生徒や親にとって、どの学校に進学できそうか、どの学校に進学願書を出すか、を判断・選択することは、人生における重要なモーメントに違いありません。そして、生徒の住む通学区域の学校に限らず、幅広い選択肢から入学先を選択する機会を生徒や親に提供するため、近年いわゆる学校選択制が日本でも導入されつつあることは皆様もご存知でしょう。だが、実際の学校選択制度の運用は、生徒や親の判断・選択が正しく行われるように、またその結果社会にとっても最良の教育効果が上げられるように、公正、透明かつ歪みなく設計されているのでしょうか。こうした問題に、経済学や他の学問分野は役に立つのでしょうか。本プロジェクトを採り上げた背景について少しご説明しましょう。

 経済学が自然科学に匹敵する実用的な科学になりうるか、これまで少なからぬ懐疑が表明されてきました。しかし、当初「100年に一度」とさえいわれた2008年金融危機後の展開をみると、大恐慌以後、マクロ経済運営のノウハウ、 智慧はまがりなりにも進歩してきたといえるのではないしょうか。最近の経済学で、社会に対してより目に見える貢献をなしつつあるのが、「メカニズム・デザイン」理論とその応用です。この理論は、2007年に90歳という史上最高齢でノーベル賞の栄誉に輝いたハーウイッツ教授が創始したものです。教授は、20世紀の前半から半ばにかけ論争された「社会主義計画経済 対 資本主義市場経済」の問題を超えて、公共財などの配分や外部性のコントロールを効率的に達成するために、従うべき制度の設計のルールについて問題提起を行ったのです。すなわち制度を批判や擁護の「与件的対象」としてではなく、「選択変数」として考えようというわけです。ここで、その設計が一部政治家の思想的な押しつけや、官僚・テクノクラートの便宜主義的・独善的な選択にもとづくものであれば、人々の誘因にゆがみが生じ、ひいては政治家や官僚の意図にさえ反する結果が生じてしまいます。では、それぞれの市民が、自分の本来持っている価値観や嗜好を自発的に表明・選択できる仕組みを通じて、社会的に合意される目的がよりよく達成される仕組みがありうるのかどうか。もちろん、達成されるべき社会的成果について市民間で大きな意見の違いのあるとき、そうした仕組みの設計可能性には問題も含まれます。しかし、ここ20年ばかりの間に、ある程度の社会的同意が得られそうな配分問題にかんして、様々な望ましい特性を持った分権的なメカニズムが経済学者たちによって提案され、国際的に実行に移されてきました。IT時代にふさわしい周波帯の配分に関するオークション・メカニズムや、臓器移植の供給と需要を病理的な緊急度や生理的適合性を考慮しつつマッチングさせるメカニズムの設計などがそれにあたります。しかし、こうした理論の現場への応用、理論と現場のインタラクション(相互作用)による理論そのものの改善といった点で、日本はこれまで、国際的に大きな後れをとってきました。政策形成における社会科学的なノウハウへの理解が政策担当者に薄いという問題もありました。

 本プロジェクトでは、そのメカニズム・デザイン理論の代表的分野であるマッチング理論の目覚ましい発展をバックグラウンドに、日本の学校選択制度の実態や問題点を現場や自治体レベルから学びつつ、制度の設計・改善にどのような示唆ができるか、さまざまな角度から探求することを目指しました。アカデミアという世界で作られた抽象的な理論を、現場に天下り的に適用しようという試みでないかという疑念を持たれる向きもあるかもしれませんが、決してそういうことはありません。市民たちの動機と両立し、かつ情報効率的な仕組みを設計しようとすれば、現場情報からのフィードバックは不可欠です。現場情報、研究、政策提言の「マッチング」は従来の行政、学界、政策形成の縦割りの仕組みのもとでは、なかなか難しかったといえますが、このプロジェクトは、日本におけるそういうコミュニケーションの可能性について、一つの実験を試みたものと理解していただければ幸いです。過去2年間にわたって、このプロジェクトでは、学校選択制が抱える問題や生徒・保護者のニーズ等について、東京都の13の区の教育委員会へヒアリングを行ない、それによって理論モデルの改善・発展を心がけてきました。私の評価では、メカニズム・デザイン論の国際的フロンティアで活躍している気鋭の研究者たちと、東京財団における政策研究のエキスパートの協同は見事な効果を発揮したとみます。プロジェクト・リーダーである安田洋祐(政策科学大学院)を始め、研究者たちは、ほとんど手弁当に近い形で、熱情を込めてこのプロジェクトを推進しました。特に大学院で理論研究を目指しているVCASIアシスタントたちが、こうした現実関連性のあるプロジェクトに参加し、理論と現実の課題とのフィードバックの経験を得たことは、新しいタイプの経済学人材を育てるという意味でも大きな意義があったといえます。さらには、このプロジェクトの成果が、メカニズム・デザイン論の現実的関連性をさらに深める日本発の貢献のきっかけとなることも期待されます。そうした願いも込めて、本プロジェクトの成果は〈叢書 制度を考える〉の一冊として発刊されました。この書物は、早くもある有力大学の教育学部の指定教科書として採用され、また 研究プロジェクトの報告会には地方自治体の教育委員会の方々の参加も見られました。

 

インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築 


2006年12月13日に「障害者権利条約」が国連総会で採択され、日本も2007年9月28日に署名し、現在その批准を目指しています。この条約は、障害者の被っている不利益の原因を個人の医学的症状ではなく社会のあり方に求め、その不利益を人権問題として解決しようとしている点に特徴があります。このような理念に立脚した条約の具体的内容を日本で実現するためには、障害の社会科学的分析が必要です。フェローである川越越司(公立はこだて未来大学)をリーダーとした本プロジェクトは、障害学と経済学と法学のあいだの学際的議論を進め、条約批准後に向けた障害者政策の提言を行うということを目的としました。研究会をつうじて、障害者雇用制度や障害者の自立支援制度、ベーシック・インカム構想をはじめとする障害者への所得保障制度などの設計において、経済理論がかなりの有効性を持つことが明らかにされました。こうした発見によって、インクルーシブな社会を構想する際に障害となっている、障害者に対する社会的偏見の、根拠のないことが今後、理論的に明らかにされることも期待されています。このプロジェクトは昨年度で終結し、その成果は、報告書にまとめられる予定です。

 

「社会のルールについて」研究会


以上の3つの具体的プロジェクトと並び、VCASIは様々な専門家を内外から招いてセミナーやミニ・コンファレンスを催してきました。他分野とのコミュニケーションを通じて、さまざまな研究・政策課題に新鮮な視点を取り込むと同時に、新たな研究・政策課題を発見していくための場という位置づけです。とくに、認知科学、脳神経科学、進化理論などといった生物科学の目覚ましい発展とその成果の社会科学に対する浸透によって、制度やより広く社会のルールの考え方に大きな反省が起こっている今、そうしたセミナーの重要性は特に高まっているといえます。これらのセミナーには、広く「社会のルールについて」研究会という暫定的な冠をかぶせて、昨年度は、全12回のセミナーを開催しました。最近ではそのすべてが生中継され、録画された動画はVCASIのウェブサイトを通じて公開されています。それに伴って、ウェブサイトのアクセス数やページビュー(PV)も増大し(2009年4月~2010年2月の間に208、618PV。1か月平均で18,965PV)、またVCASIフレンズの登録数もうなぎ上りに増加し、100名を超えつつあります。この研究会は、2010度も「社会科学と生物科学の対話から社会のルールを見る」として継続していく予定です。

 

2010年度に向けて

 
 今年度はこうした成果を踏まえ、冒頭に述べた3つの壁を乗り越えるためのコミュニケーションをさらに進化させ、その成果を世に問うていきたいと思っております。具体的には、すでに述べた①「会社と家族の間で」と②「社会科学と生物科学の対話から社会のルールを見る」をフォーカル・ポイントとして据え、これまで以上に各種のイベントや研究会の議論を発展させ、その内容を広く発信していきたいと考えております。これら2つのテーマについては、その問題意識をすでに説明しましたので、ここで、今年度のVCASIのその他の活動について少し補足させていただきたいと思います。

 さる4月のVCASIの第3回ブレイン・ストーミング・セッションでは、フェローの鈴木健(サルガッソー代表)が「社会システム2.0~なめらかな社会とその敵~」というタイトルのもとで、ネットワーク時代における貨幣・政治の可能性について独創的なアイディアを展開してくれました。今日のICTの発展は、単に既存の制度的枠組みの中での技術革新と見なされるべきではなく、われわれの人間、社会、経済、政治に対する見方を根本から更新し、既存の制度的枠組みを揺がすような潜在的可能性を秘めています。こうした問題を取り上げ議論することこそ、VCASIのような超学際的インタラクションを旨とする組織に相応しいといえましょう。今後もおりにふれて、こうしたテーマを追求していきたいと思います。

 また、昨年度に大きな成果をあげて一応のピリオドを打った「学校選択制デザイン・プロジェクト」も、プロジェクト活動において現場担当者とのインタラクションから得た知見に触発された学術論文の刊行や、政策提言の具体化やさらなるアウトリーチ活動といった形で、今年度も活動を継続させていくことになるでしょう。

 さらに、こうした活動と並んで、既にふれた〈叢書 制度を考える〉というシリーズの充実にも力を注いでいきます。現在専門書の出版危機が言われていますが、NTT出版の全面的なご協力を得て、 VCASIフェロー編集によるこの本格的な学術書の翻訳/出版書シリーズは商業的にも成功を収めつつあります。ゲーム理論と歴史分析の統合という画期的な業績と見なされているアブナー・グライフ著の『比較歴史制度分析』は浩瀚な学術書であるにもかかわらず、監訳者であるフェローの神取道宏、岡崎哲二(東京大学)によるVCASIウェブサイトでの紹介論文などの力もあって、既に3版を重ねました。また既述の通り、『学校選択制のデザイン:ゲーム理論的アプローチ』は、大学の教科書に指定されました。今年度中にも、さらに『自然的正義』(ケン・ビンモア著)、『ミクロ経済学—行動・制度・進化』(サミュエル・ボールズ著)、『コーポレーションの進化多様性−集団的認知・ガバナンス・制度』(青木昌彦著)などの著作(題名はいずれも仮題)の翻訳出版が企画されています。

 VCASIのような知的ベンチャーを運営するには、当然それを支える資金と、それが目的に沿って有効に用いていられているかをモニターするガバナンスのメカニズムが必要です。そして特定の利益集団(役所を含む)の干渉からは自由な、自己責任に基づいた研究を支え、評価していただくには、中立的な財団の支援がもっとも望ましいことは言うまでもありません。このことはアメリカにおける研究の先進性の制度的な背景としてよく指摘されるていることでもあります。このような状況は、日本においては未成熟といって良いと思われますが、幸いにもVCASIの実験は、今年も東京財団の加藤秀樹理事長の下で2010年4月から公益社団法人として新発足した東京財団のプロジェクトとして継続させていただくことになりました。その期待に応えられるように最大限頑張りたいと考えています。皆様のご支援とともにVCASIの活動自体へのご参加を心から願っております。