2009年3月28日、日本財団ビルにて第4回VCASI公開フォーラム「コーポレーション」が開催された。 このフォーラムはVCASIの研究プロジェクト「コーポレーション」のキックオフといえるもので、プロジェクトメンバーを中心に今後の課題について広く採り上げ、また議論することを目的としている。フォーラムは、 (1)認知科学の成果を取り入れたコーポレーション概念の理論的検討、 (2)日本・西欧・イスラーム・中国における社団組織の比較分析、 (3) (1)(2)を踏まえたコーポレート・ガバナンスや雇用問題の検討、 をそれぞれ主題とする3部より構成され、パネルには総勢15名の研究者・実務家が立ち、討論を行った。
【第1部】 コーポレーションの本質を再考する――認知システムとしての側面から 報告: 青木昌彦・植田一博 ディスカッション: 瀧澤弘和・谷口和弘
第1部では、フォーラム全体を貫く問題関心を示すとともに、コーポレーションの理論的視座に再考を促すものである。まず青木氏が、認知システムとしてコーポレーションを捉え直す視座を提起し、その1変種である企業について、組織構造とそれに対応するガバナンスの類型を提示した。これに対する谷口氏のコメントは、青木氏の議論を株式会社研究の動向に位置づけ、問題提起を図るものである。 次に植田氏は、認知科学の見地から、需要サイドから新しいアイディアが発生するメカニズムの研究結果を報告した。最後に瀧澤氏がコメントとして、青木氏・植田氏に共通する問題意識を抽出し、社会科学への応用可能性を提起した。 詳細ページ
*資料:青木氏資料、植田氏資料、瀧澤氏資料
【第2部】 パネル: 社団組織・思想の比較歴史
コーディネーター: 中林真幸 パネリスト: 源河達史・池上英子・季衛東・酒井啓子
第2部では、日本・西欧・イスラーム・中国それぞれにおいて歴史上成立した社団組織のありようを、比較の観点から議論した。日本について、まず中林氏が、経済史の立場から近世の社団組織とそれを取り巻く統治機構との関係を主題に、続いて池上氏が歴史社会学の立場から、比較の観点でみた近世の社団組織を主題にそれぞれ報告した。次いで西欧について源河氏が、11世紀に始まる教会改革における団体概念の構築を主題に論じた。中国についての季氏の報告では、伝統中国の社団組織の特徴を抽出した。そしてイスラームについては酒井氏が、前近代イスラーム社会における社会組織につき報告した。 詳細ページ
*資料:池上氏資料、酒井氏資料
【第3部】 パネル: 経済危機はコーポレート・ガバナンスについて何を示唆するか? 特に人的資本との関係において コーディネーター: 鶴光太郎 パネリスト: 池尾和人・宮島英昭・新原浩朗・守島基博・久米郁男 第3部では、とりわけ第1部の議論を踏まえつつ、今回の金融危機が、コーポレート・ガバナンスや雇用問題に対し提起した含意を議論した。パネルでは、鶴氏のコーディネートのもと、池尾氏が金融危機の要因につき整理した上で、コーポレート・ガバナンスについて、とりわけ企業組織の変容を宮島氏が、社外取締役導入を巡る見解を新原氏が報告した。雇用問題については、守島氏が企業の人事施策の観点から、久米氏が比較政治学的観点から報告した。 詳細ページ *資料:池尾氏資料、宮島氏資料、新原氏資料[1]・新原氏[2]、守島氏資料、久米氏資料
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