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「コーポレーション」フォーラム第三部

■第3部 パネル: 経済危機はコーポレート・ガバナンスについて何を示唆するか? 特に人的資本との関係において

コーディネーター: 鶴光太郎
パネリスト: 池尾和人・宮島英昭・新原浩朗・守島基博・久米郁男

第3部では、とりわけ第1部の議論を踏まえつつ、今回の金融危機が、コーポレート・ガバナンスや雇用問題に対し提起した含意を議論した。パネルでは、鶴氏のコーディネートのもと、池尾氏が金融危機の要因につき整理した上で、コーポレート・ガバナンスについて、とりわけ企業組織の変容を宮島氏が、社外取締役導入を巡る見解を新原氏が報告した。雇用問題については、守島氏が企業の人事施策の観点から、久米氏が比較政治学的観点から報告した。

* * *

(A)金融危機の要因
まず池尾氏より議論の前提として、2007年以降の金融危機を引き起こした要因につき整理がなされた。2000年以降、経常収支の不均衡が拡大する過程で、米国の金融ビジネスは住宅関連の証券化商品を大量に供給し、これが転じて危機を発生させた。過大なリスク・テイクを加速させた背景には金融ビジネス関係者のインセンティブ構造の歪みがあるという。<資料>

(B)コーポレート・ガバナンス
続いて宮島氏は、近年の日本企業の組織革新の趨勢として、(1)持株会社の増加、(2)95年以降のアウトサイダー保有比率の上昇が止まり、インサイダー保有比率が再び増加している企業が存在することを挙げた上で、金融危機のなかで(1)内部ガバナンスのモニタリングの仕組みとして、社外取締役の役割を再考する必要性(2)Hybrid‐I企業における、機関投資家の増加を介した経営行動への影響を指摘した。<資料>

新原氏は、コーポレート・ガバナンスを巡る前線の担当者間における見解の収斂を背景に、取締役会への圧力がかかりにくい米国企業のガバナンスと、株主総会にかけなければ投資家の信頼が得られにくい日本企業のそれの問題点をそれぞれ指摘した上で、(1)取締役会の構成における社外者と内部者のバランス、(2)マイノリティ・シェアホルダーの代表性の観点から、社外者のなかでの独立者とそれ以外のバランス、(3)監査役会の実態上のガバナンスにおける説明責任につき、問題を提起した。<資料1>    <資料2>

(C)雇用問題
守島氏は、(1)株主価値重視+従業員育成重視(2)株主価値重視のみの企業との間には、非正規労働者の人事施策に相違があるというデータを紹介し、正社員全体をコアを考えるか、正社員のなかにコア/ノン・コアを弁別しているかの違いによるのではないかという解釈を提示した。その上で、企業の正社員内部においてコアの度合の弁別を進めていく必要性を訴えた。<資料>

久米氏は、派遣規制を巡るディスコースを、雇用保障と人的資本育成を企業内部で対応すべきか、外部で対応すべきかという見解の対立に整理する。その上で、雇用調整助成金など前者に規定される政治力学が経路依存的に発生する一方、90年代以降増加してきた、市民団体を支持層とする政治家の既得権益を忌避する選好が、このような企業内部での雇用保障論に規定された政策に対抗する可能性を示唆した。<資料>

(D)ディスカッション
討論においては、・証券市場のルールを巡る政府の規制と業界の自主ルールの役割、・取締役のインセンティブに関連して報酬体系改革、・機関投資家がガバナンス改革に果たす役割などの論点について、活発な問題提起がなされた。

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