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第2回 インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築プロジェクト研究会

2009年7月11日(土)、「インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築」プロジェクト、第2回の研究会が開催された。
参加者は、フェローの川越敏司(公立はこだて未来大学複雑系科学科)、瀧澤弘和(中央大学経済学部)、プロジェクト・メンバーの岡部耕典(早稲田大学文化構想学部)、川島聡(東京大学大学院経済学研究科)、中根成寿(京都府立大学公共政策学部)、星加良司(東京大学先端科学技術研究センター)そして佐藤孝弘(東京財団)であった。
 

はじめに岡部耕典より、「障害者自立支援法における利用者負担(応益負担)の社会政策的意味」についての報告が行われた。

まず福祉サービスの応能負担と応益負担をめぐる制度と議論の変遷について整理された。福祉サービスにおける利用者負担は戦後の「公私分離の原則」のもとで私費を「活用」するための便法として開始されたが、「公私の役割分担」論が公共サービスの利用を「益」ととらえ負担を求める議論を展開した際にも、基本的に応能負担を前提としており、応益と応能の是非についての議論はなかった。介護保険制度の開始により、福祉サービスの制度に初めて応益(定率)負担が導入されたが、それは「社会保険制度との整合性」が主たる要因であり、応益(定率)負担の是非についての議論はなかった。障害者自立支援法の成立により障害福祉に応益(定率)負担が導入された際は、その「介護保険制度との整合性」の 確保が主たる要因であり、やはり負担の応益(定率)化の是非についての議論はなかった。側面的な議論からは福祉サービスの利用における応益(定率)負担導入の政策的含意は中高所得者層の福祉サービス利用拡大という「益」を目指すものであると考えられるが、このような大きな影響を有する制度メカニズム変更にあたり、応益負担化によって生じる低所得者層の「不利益」とともにきちんと議論され合意形成がなされたことがないという政策決定過程の瑕疵が指摘された。

続いて、応益(定率)負担と応能負担の政策的効果に対して検討が行われた。まず京極2003における「費用負担ボックス」論が確認され、そのうえで、岡部2008の「概念図」に対する京極2008bの批判及びその修正概念図の検討が行われた。
さらに、応益負担の政策効果について、京極2003における「利用者負担の諸機能」及び京極2009における障害者自立支援法の応能負担に即したその修正版を用いて、岡部2008における検討を確認するかたちで双方の主張の妥当性がそれぞれの論点を踏まえつつ精査された。結果として、応能負担の応益負担化の政策効果は中高所得者の「益」であり低所得者の「不利益」であるという岡部2008の主張に特段の疑義はないことがその後の参加者のディスカッションも経て確認された。
 




次に中根成寿より、「 障害者家族における家族ケアの特性と限界ー規範から政策に向けて」についての報告が行われた。

まず、前回の川越・川島の報告を受けて、本研究会における中根の貢献が家族内における「感情」であることが示された。感情が現在の社会における家族内ケアにおいてなお重要な概念であること、また感情を理解することを経済学・法学・政策学が不得手としているのではないかと指摘された。

次に、家族ケアの外部性が紹介された。家族内で行うケアは、現在、社会福祉サービス(公的介護保険、障害者自立支援法)において現金給付の対象となっておらず、無給であることが当然となっている。家族の無償性が社会福祉サービスとの整合性を崩していることが指摘された。次に、家族の無償性はなぜ維持されているかについて、「外圧的義務」と「内発的義務」の二つの概念が紹介された。「外圧的義務」とは、民法や生活保護法に規定される「親族扶養義務」と、明文化されていない「愛情規範」や親の「罪悪感」であると整理された。一方で、外圧的義務だけでは家族ケアに向かう動機が説明しきれない、としたうえで、「内発的義務」という概念が紹介された。これは最首の提示した概念であり、「目の前の人を放っておけない」という感覚が、外圧的義務の存在とは別に、ケアする人の内部に生じる、という主張である。井口や三井が言う「無限定性」も内発的義務と類似した概念であることが指摘された。
家族の感情を踏まえた、ケアの社会化の提言がなされ、その実現のためには、「ケアの社会的分有」が実現する必要があることが指摘された。これは、家族だけがすべてのケアを行うのでもなく、社会がすべてケアを担うのでもないケアのあり方である。具体的に実現すべき課題は、民法の改正と家族への現金給付などが優先事項であることが指摘された。また、ゲーム理論や法律との共同作業のために、家族の感情をどのように理論化できるのかという疑問が報告者からなされ、その件を含めたの参加者間のディスカッションが行われた。

次回は、8月29日(土)に、「障害の社会モデル」に関して、川越、星加、川島、それに倉本智明がそれぞれの問題意識について発表する公開シンポジウムを開催することとなった。

 

 



本研究会では、限られた予算の中で手話通訳などの情報保障をしていますが、研究会の議論をインターネットで公開する際には、字幕を付ける配慮までにはお及びませんでしたことをあらかじめお詫びしておきます。


 第一部動画

 

第二部動画

 



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