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第4回 インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築プロジェクト研究会

2009年10月24日(土)、「インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築」プロジェクト、第4回の研究会が開催された。参加者は、フェローの川越敏司(公立はこだて未来大学複雑系科学科)、瀧澤弘和(中央大学経済学部)、プロジェクト・メンバーの岡部耕典氏(早稲田大学文化構想学部)、川島聡氏(東京大学大学院経済学研究科)、中根成寿氏(京都府立大学福祉社会学部)、星加良司氏(東京大学先端科学技術研究センター)、長江亮(早稲田大学高等研究所)、佐藤孝弘(東京財団)、そしてRAの鈴木和尭であった。


最初に中根より、立岩真也2009『税を直す』についての報告がなされた。まず立岩の論拠である「自由のための分配の確保」と「所有権概念の提示」がなされ、現在の所得税の累進性を高めることの正当性が本書で述べられていることが紹介された。1980年代から日本の累進制が継続的に引き下げられてきたこと、代わりに間接税としての消費税の導入、社会サービスの「社会保険化」が進めら得てきたことが批判された。累進性の強化に反対する立場からなされる「労働インセンティブの低下」「資本・人の国外移転」等に関しては、批判の根拠が「恐れ」や「可能性」に終始しており、根拠の弱さが述べれている。一方で立岩、批判された経済学者双方とも実証的な証明が少ないことが課題としてあげられた。


つぎに、川越から「最適所得税論入門」の報告があった。報告では、累進課税(応能負担)は経済学的に正当化できるかについて、まずマーリーズに始まる最適所得税論の基本的な考え方が、所得課税が労働インセンティブを低下させる効果を視野に入れつつ、社会的厚生を最大にするような非線形の(つまり、累進性の)所得税スケジュールを求めることであることが説明され、続いて、ダイヤモンドやサエツらの最近の研究と、マーリーズの推計結果が大きく食い違っているのは、所得分布に関する推定が異なるためであることが説明された。次に、ダイヤモンドやサエツらの研究をふまえた日本の最適所得税率に関する推計結果はおおむね現行の最高所得税率は低すぎることを示していることを確認した上で、マイルズの研究を引用して、理論上は、所得分布の仮定が違えば、最適所得税率は様々に変化しえるため、所得分布の推計が非常に重要であることが指摘された。最後に、累進課税を正当化する議論の一つとして、J.S.ミルによって提唱された平等な犠牲という概念が紹介され、以前は効用の個人間比較に依存しているため実用的ではないとされていたが、ヤングによる最近の研究では観察可能な変数のみで推計可能であることが示されているため、平等な犠牲に基づく所得税率が日本の場合にはどのようになるかを推計すべきとの提案がなされた。発表後の討論では、マーリーズとダイヤモンドの推計した最高税率が食い違う理由が、所得分布の推計の違いによると説明されたが、背景にあるロジックがあまりよくわからないという指摘があった。この点については、所得分布の推計法やそれが抱える問題点について、次回議論することとした。また、労働統計や所得統計などに表れてこない階層、特に障害者について、最適所得税論がどこまで十分な議論を提供できるのか不明であるとの指摘があった。これについても、それらの統計の整備状況について、次回の研究会で検討することとした。


最後に岡部より、マニフェスト2009及びINDEX2009に掲載された民主党の給付政策と税政策の概要が紹介された。そのうえで、官僚主導・補助金による誘導を前提とするこれまでの財政・税制システムから個別・直接・無条件の再配分を基本とするしくみへの転換を目指す民主党の政策を積極的に評価する一方で、未だ明らかにされていない税の徴収の在り方について積極的に提言することが肝要であることが主張された。具体的には、中根が紹介した所得税を中心としその累進率を高めることを求める立岩の主張や川越が最適所得税論を用いて行った累進課税正当化の検討をさらに進め、具体的な制度提言へと接合させていくことの重要性の指摘が行われた。
終わりに、川島より、こうした再分配の議論と障害の社会モデルの研究をどのように接合していくべきか検討すべきであるという指摘があり、今後の課題となった。


次回は、今回の議論を受けて、長江がその問題意識について発表することとなった。



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