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第5回 インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築プロジェクト研究会

2009 年12月10日(木)、「インクルーシブな社会を目指した障害者政策の構築」プロジェクト、第5回の研究会が開催された。参加者は、フェローの川越敏司(公立はこだて未来大学複雑系科学科)、瀧澤弘和(中央大学経済学部)、プロジェクト・メンバーの岡部耕典氏(早稲田大学文化構想学部)、長江亮(早稲田大学高等研究所)、佐藤孝弘(東京財団)、そしてRAの鈴木和尭であった。

長江からは,「障害者施策における応能負担正当化議論についての客観的妥当性について」というタイトルで報告がなされた。報告は、二つのテーマに分割して行われた。一つ目は、前回の川越の報告における最適所得税論の議論において、マーリーズとダイヤモンドの推計した最高税率が食い違う理由が、所得分布の推計の違いによると説明されたが、背景にあるロジックがあまりよくわからないという指摘に対するものであった。そこでは、日本の高額所得者の最高税率を推計した研究を例に、高額所得者層の所得分布はパレート分布に従っていることを前提として最高税率が推計されることが解説され、前提とされる所得分布が異なれば、導出される最高税率も異なることが繰り返して説明された。また、日本の研究では最高税率がおおむね50%を超える結果が提示されているため、応能負担は一定の妥当性があることが解説された。

二つ目に、日本の障害統計の整備状況を確認が必要との議論を受けて、障害者の生活が貧窮していることの確認を量的に検討した分析が報告された。ここではまず、障害者施策と障害者運動の歴史と障害福祉サービスの制度の変遷が整理された。これに即して、当事者やその関係者の要請が不完全ながらも政策にとどいていると思われること、長江の問題意識も自身の体験に根差すものであることが述べられた。そのうえで、生活保護の対象となる障害者の数が多いことが解説され、障害者の就労状況を確認するために、障害者雇用施策についてその概要と現状が解説された。そこでは、障害者の就労に対する欲求は大きく、施策は必ずしも円滑に機能しているとはいえないことが確認された。また、福祉政策によって規定されている授産施設で就労する障害者の生活が厳しいことが統計的に確認できるため、低所得者に不利益をもたらす応益負担は現実的に支持されず、応能負担の妥当性があることも再確認された。

続くディスカッションでは、応益負担、応能負担の問題と以上の報告を受けて、障害者の「応要支援」を経済学的にどのように正当化するかについての議論、プロジェクトとして法学、障害学、社会学、経済学がどのようにコラボレイトしていくかということにかんして、メンバーの問題意識を再構成していくべきとの議論、応益負担にまつわる通説を確認できるか等の議論がなされた。

次回は、一橋大学の吉原直毅氏を招いて厚生経済学や規範理論について講演をしていただく予定である。



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