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第21回「脳・認知ロボットの実験から考える内在的な自己について」 (谷淳先生)

2009年12月15日(火)VCASIでは、理化学研究所脳科学総合研究センター動的認知研究チーム、チームリーダーの谷淳先生をお呼びし、第21回VCASIセミナー「脳・認知ロボットの実験から考える内在的な自己について」 を開催した。当日は、青木昌彦氏(スタンフォード大学)、瀧澤弘和氏(中央大学経済学部)などのフェローをはじめとして20人程度が参加し、予定を超える3時間以上の活発な討議が行われた。

本セミナーは、現象学的な自己のありようについて自律エージェントの観点から独自の研究をしている谷氏の問題意識の総まとめというべきものであった。谷氏のここ15年間のロボット研究から3つのトピックをとりあげ、詳細に説明すると共に、通底する問題意識をあぶり出すものであった。

まず、移動ロボットの研究では、リカレントニューラルネットワークをもったロボットが閉路を巡回する課題で、学習したリカレントネットがスムーズにランドマークを認識しているときのダイナミクスは安定しているが、ひとたび予測がずれると、カオス的な挙動になる。この研究をヴァレラらに紹介したときに、現象学を参照するとよいといわれ、結果、これはハイデガーが指摘した、金槌を使う大工が道具を身体の一部として使ったり意識したりを切り替えているの例のようなものであり、最小自己といえるものだと気づいたという。

また、ヒューマノイドロボットの学習課題では、Recurrent Neural Network with Parametric Bias(RNNPB)というモデルを使い、運動のカテゴリーのスイッチが起こるようなモデルを作った。さらに、ロボットの学習した運動パターンを引き出すように人間が真似をするという課題を行った。ロボットの動きを最初は予測できないが、だんだん予測できるようになる。それがちょうど半々くらいのときに、被験者は、ちょうどロボットに自由意志を感じるようになるという。これは、「心の理論」や社会的自己と関係するのではないかという指摘があった。

さらに、2つのRNNPBを組み合わせるモデルでは、神経システムにおけるトップダウンとボトムアップがぶつかり合って運動の分節化が起こる。これが自己参照的自己と関係しているという。最後に、研究を通底する考え方として、不安定なもの、予測不可能なものがあることを通して自己が生まれてくることが語られた。そしてその究極としては死があるというハイデガーの「現存在(Da-sein)」としての人間の話におよび3時間を超えるセミナーが締めくくられた。

本セミナーは科学ジャーナリストの森山氏によるRobot Watchの取材を受けた。Robot Watchで、森山氏による、より詳細なセミナーの内容の紹介を読むことができるので参照していただきたい。











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