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第22回「政治主導と立法のあり方-『政治』をめぐる議論の錯綜とその意味・役割・限界-」(川﨑政司先生)

2009年12月18日,VCASIでは立法実務がご専門の川崎政司氏(慶應義塾大学客員教授)をお迎し,第22回VCASIセミナー「政治主導と立法のあり方-『政治』をめぐる議論の錯綜とその意味・役割・限界-」が開催された.

本研究会は,従来政官関係を中心に論じられてきた「政治主導」の定義や意味を「立法」の視点からとらえ直すことで,政権交代後の日本の政治システムが抱える規範的課題を抽出することを目的として行われた.

発表の冒頭では,90年代に行われた一連の政治制度改革とそれをめぐる議論が分析され,結果としてそれらは不十分だったとの認識が示された.その時点から,「政治の役割をも担ってきた官僚と政治の役割を十分に果たしてこなかった政治」に対する問題意識が引き継がれながらも,政治主導はスローガンとして掲げられるだけで,その正確な定義がなされてこなかったことが確認された.

具体的には,自民党政権のもとでは,橋本政権における官邸機能の強化,小泉政権における内閣総理大臣のリーダーシップに象徴されるように,「政治主導」は「内閣中心構想」として読み替えられてきたと言える.他方,現在の民主党政権では,「政治主導」を旗印に政調機能の廃止や議員立法の禁止が行われている.民主党によるこうした政治主導は,政府への政策決定の一元化を意味しつつも,与党審査の慣行が政府与党間の調整に一定の効用をもたらしていたことに照
らしてみると議論の余地を残していることも事実である.

すなわち,政治主導への転換という問題意識は,議論の様相を変えながら長年引き継がれてきたものの,依然として政治主導が何を意味し,その強化によって何をどう変えるべきなのか,何が変わるのかが明確になっていないのである.本研究会はそうした問に答えるための必要な問題設定のあり方を示すものであった.

例えば,政策調整過程に関して政調機能の廃止や議員立法の禁止という施策を通じて民主党が目指している伝統的な事前調整モデルからの脱却は,司法の役割の再考にまで及ぶ射程の広い問題の1つとして捉えることができる.具体的には,事前の調整機能が事実上無くなることによって,事後調整の重要性が認識されることになり,権力分立の観点から一部で議論の対象になってきた「政治を意識した司法消極主義」に変容を迫る可能性を孕んでいるからだ.

こうした議論は戦後,権力分立制と議院内閣制という異なる理念を重ね合わせてきた日本の政治制度に適した政治主導の具体的要件の模索であるため,複雑なものにならざるを得ない.過去にしばしば陥った「政治」への不満の捌け口探しを繰り返すことなく,問題相互の関連を論理的に整理し,精緻な問題設定をすることが現在ほど必要となっている時期はないと言えよう.

当日は,VCASIフェローの谷口功一氏(首都大学東京大学院),大屋雄裕氏(名古屋大学大学院),瀧澤弘和氏(中央大学経済学部)をはじめ,政治学,公共政策などを専門とする学部生・大学院生など10名あまりが参加し,上記のような問題に関して活発な議論が行われた.