Language: 日本語 English

VCASI公開研究会「社会のルールについてV: 社会と個人の相互性への実験的アプローチ」

日時: 
2010/3/31(水) 13:00-
場所: 
日本財団ビル3階A会議室
発表者: 
青木昌彦
山岸俊男
金子守
藤井直敬
概要: 
2010年3月31日、VCASIは公開研究会「社会のルールについてV:社会と個人の相互性への実験的アプローチ」を開催した。当日は、青木昌彦(比較制度分析/VCASI、Stanford大学経済学部)の導入に続いて、山岸俊男(社会心理学、実験社会科学/北海道大学文学研究科)、金子守(ゲーム理論、論理学/筑波大学システム情報工学研究科)、藤井直敬(神経科学/理化学研究所脳科学総合研究センター)の発表、そしてそれらに対する瀧澤弘和(ゲーム理論/VCASI、中央大学経済学部)、平井洋一(計算機科学/東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻)、加藤淳子(政治学/東京大学法学政治学研究科)の討論を中心に議論が進んだ。

参加者は、VCASIフェローの岡崎哲二(経済史)、戸矢理衣奈(歴史学、社会心理学、ブランディング)、松井彰彦(ゲーム理論、経済学)、安田洋祐(ゲーム理論、ミクロ経済学)の他、意思決定理論、経済学、ゲーム理論、国際関係論、実験社会科学、社会心理学、神経科学、政治学、生物学、複雑系、マーケティングなどを専門とする研究者、編集者、学生ら60名弱。Ustream上の動画中継を通じた視聴者数は合計751人(平均56人)に及んだ。

趣旨
社会現象を生みだす背後のからくりを抽出しようとするこれまでの試みは、少なくとも2つの典型的な分析上の戦略を持つ。一方で、自律性や志向性を備えた単位としての個人を仮定し、それらの相互作用の帰結として社会現象を描くこと。(個人から社会へのベクトル)他方で、歴史的に形成された信念、慣習、文化、規範を所与として、それらへの受動的な適合として個人のふるまいを把握すること。(社会から個人へのベクトル)そして、これら2つのベクトルは、潜在的には接続して1つの円環をなす。にもかかわらず、2つのベクトルの接続の内部構造に関して、私たちは依然として驚くほど無知である。そして、その暗箱を開こうとする最新の試みは、いくつかの理論的、(実験)技術的革新を要請しつつある。たとえば

・「個人のふるまい」や「社会現象」と私たちが呼ぶ対象の記述や計測をこれまでになく微細化、多元化する必要
・しばしば外的道具・制約としてのみ扱われてきた人工物や社会的装置を社会と個人の円環と切り離せないかたちで再導入する必要

古いが依然として新しいこれら諸問題を総称して、ここでは「社会と個人の相互性」と呼ぼう。「社会のルールについてV:社会と個人の相互性への実験的アプローチ」は、社会と個人の相互性を明示的に扱った実験的研究をいくつか取り上げ、その含意について多義性や曖昧性を許しつつ超学際的に議論する。

報告
13:00-13:30 session 0
青木昌彦(比較制度分析/VCASI、Stanford大学経済学部)
 「社会のルールに関して、何故、どのように、超学際的なアプローチが必要か?」
参考論文:"Institutions as Cognitive Media: Between Strategic Interactions and Individual Beliefs"(http://www.vcasi.org/node/620)
はじめに、以後の議論への導入として、青木昌彦(比較制度分析)が社会のルール(societal rules)の暫定的定義("Commonly-organized, salient features of the ways by which the societal games is recursively played and expected to be played.")を提案した。その上で、社会のルールについて考える際の思考の軸となりえるいくつかの問いを挙げた。事前の設計の対象か自生的秩序か、選択に対する制約か選択の帰結か、行動の規則性か認知の一範疇か。そして、一層具体的に、公的標識(public indicators)を通じた共有知識(common knowledge)の形成、人工物の社会的構築とその機能、文化の神経・言語機能への影響といった主題群を簡単に描写した。その後の発表や討論は、これらの問題提起を消化しつつ、問題意識や分析手法を更新していくための手がかりを与えるものだったと言っていい。以下では、それぞれの発表・討論におけるキーワードを列挙していく。
 
 
13:30-15:00 session 1
山岸俊男(社会心理学、実験社会科学/北海道大学文学研究科)
 「ニッチ構築としての文化」
参考論文:"Micro-Macro Dynamics of the Cultural Construction of Reality: A Niche Construction Approach to Culture "(http://www.vcasi.org/node/554)
参考書籍:『文化心理学』(増田貴文との共著、培風館(近刊))(当日配布予定)
キーワード:文化心理学vs進化心理学、説明概念と実在概念、自己成就の心理学的バージョンと社会学的バージョン、社会的真空室、文化的ゲームプレイヤー、デフォルト戦略、ペン選択・認知能力試験実験
 
討論者:瀧澤弘和(ゲーム理論/VCASI、中央大学経済学部/)
キーワード:与件としての社会規範、物理的過程としての文化形成への介入可能性
 
 
15:00-15:20 休憩
 
15:20-16:50 session 2:
 
金子守(ゲーム理論、論理学/筑波大学システム情報工学研究科)
 「帰納的ゲーム理論とその実験」
参考論文:"An Experimental Study from the Perspective of Inductive Game Theory" (竹内あい、船木由喜彦、J. Jude Klineとの共同研究)(???)
 "Transpersonal Understanding through Social Roles, and Emergence of Cooperation"(J. Jude Klineとの共同研究)(http://qurl.com/n6tlg)
参考書籍:『ゲーム理論と蒟蒻問答』(日本評論社)
キーワード:古典的・進化的ゲーム理論から帰納的ゲーム理論へ、社会的役割の交換、個人「内」協調均衡(Intrapersonal
Coordination equilibrium)、囚人のジレンマにおける協力の発生、予測の検定装置としての理論モデル
 
 
討論者:平井洋一(計算機科学/東京大学大学院情報理工学系研究科コンピューター科学専攻)
キーワード:記号列・言語・論理、知識論理(Hintikka)、(知識伝達としての)時間を導入した動的知識論理(Halpernら、Ditmarschら)、知識の証拠の文脈依存性、知識の欠如の記述
 
 
16:50-17:10 休憩
 
17:10-18:40 session 3:
藤井直敬(神経科学)
 「多次元情報への神経科学的挑戦」
参考論文:"Dynamic Social Adaptation of Motion-Related Neurons in Primate Parietal Cortex"(日原さやか、入來篤史との共同研究)(http://qurl.com/ycpcj)
"Long-term asynchronous decoding of arm motion using electrocorticographic signals in monkey"(Zenas C.
Chao、長坂泰勇との共同研究)(http://qurl.com/jmwns)
参考書籍:『つながる脳』(NTT出版)
キーワード:細胞から社会にいたる重層的ネットワーク、脳科学が直面する技術の壁、社会性の本質としての抑制、多次元生体情報記録手法2.0、猿の前頭前野の一人モード・ボスモード・弱いモード、脳と観察者のコミュニケーション、ブレイン・マシン・インターフェイス
 
 
討論者:加藤淳子(政治学/東京大学法学政治学研究科)
キーワード:キャンペーン広告と変化する嗜好、fMRI、感情温度計、科学の社会科学への収斂?、顕教(制度/組織/行動/態度/パターン)vs密教(経験則)
 
 
18:45- 懇親会
 
 
ビデオあり: 
no