Language: 日本語 English

松井彰彦氏「Zeuthen-Nash交渉解のある社会的基礎」(第30回VCASIセミナー)

日時: 
2010年10月14日(木) 17:00-
場所: 
日本財団ビル3階A会議室(http://www.vcasi.org/access.html)
発表者: 
松井彰彦氏(ゲーム理論、経済学/VCASIフェロー、東京大学大学院経済研究科/http://www.vcasi.org/fellow/%E6%9D%BE%E4%BA%95-%E5%BD%B0%E5%BD%A6)
討論者:竹澤正哲氏(社会心理学/上智大学総合人間学部心理学科/http://librsh01.lib.sophia.ac.jp/Profiles/70/0006938/profile.html)
概要: 
This paper provides a decentralized dynamic foundation of the Zeuthen-Nash bargaining solution, which selects an outcome that maximizes the product of the individual gains over the disagreement outcome. We investigate a canonical random matching model for a society in which two agents are drawn from a large population and randomly matched to a partnership, if they successfully find an agreeable payoff vector. In each period, the two agents choose to maintain or terminate the partnership, which is subject to a small exogenous probability of break down. We show that as the discount factor converges to 1, and the probability of exogenous break down vanishes, the Zeuthen- Nash bargaining solution emerges as a unique undominated equilibrium outcome. Each agent in a society, without any centralized information processing institution, behaves as if he has agreed upon the Zeuthen-Nash bargaining solution, whenever he is matched to another agent.

松井氏の発表の参考文献:
In-koo Cho and Akihiko Matsui, "A Social Foundation of Zeuthen-Nash Bargaining Solution."
http://www.vcasi.org/node/701

竹澤氏の討論の参考文献:
Masanori Takezawa, "Developing a New Framework of Adaptive Concession-making Strategies: An Approach to Behavioral Game Theory from Psychology."
http://lynx.let.hokudai.ac.jp/COE21/workingpaper/index.html
→41番

報告文
2010年10月14日、VCASIはゲーム理論・経済学が専門の松井彰彦氏(東京大学経済学部教授・VCASIフェロー)を迎え、第30回VCASIセミナー「Zeuthen-Nash交渉解のある社会的基礎」を開催した。

餓死寸前の2人の遭難者の前に1切れのステーキが置かれている。このように、対立する利害を持つ2人のプレイヤーが実現可能な複数の結果のうちどれを選ぶかをめぐって「交渉」する状況を考えてみたい。この交渉からどのような結果が選ばれると予測すればいいだろうか?この極めて漠然とした問いに対して、今日ではほとんど名が挙がることのない経済学者であるFrederik ZeuthenとNash均衡の創造者としてあまりにも有名なJohn Nashは、今日ではNash交渉解と呼ばれる簡潔で明快な解答を与えた。だが、特にNashはいくつかの公理(交渉結果の決定方法が満たす(べき)性質)を満たす交渉結果の決定方法としてNash交渉解を導いたため、より具体的な進化的・社会的状況の中でNash交渉解が実際に実現するのかどうかは不明瞭なままだった。

それ以来、Nash交渉解が均衡として創発しえるような進化的・社会的状況を具体的に発見し、Nash交渉解を「基礎づけ」る試みが行われてきた。しかし、既存の基礎づけは、ほとんど常に特定の交渉プロトコル(交渉がどのように行われるかを定めた規則)をあらかじめ固定した上で分析を行ってきた。

それとは対照的に、松井氏とIn Koo Cho氏は、交渉プロトコルが時と状況に応じて多様な形態を取ることを許す。そして、社会を構成する無数の人々が無作為に出会うとともに様々な交渉プロトコルの下で交渉し、ある結果を選ぶことで両者の合意が取れた場合にはその結果が長期的に維持されるという状況を考察した。その結果、ある仮定の下でそのモデルの唯一の定常均衡が、Nash交渉解と一致するという目覚ましい結果を導くことに成功した。

この議論を受け、社会心理学・進化心理学が専門の竹澤正哲氏(上智大学総合人間科学部准教授)は、即興を交えつつ松井氏の発表に緩やかに関連する短い討論を行った。すでに述べたように、松井氏とCho氏は交渉プロトコルが時と状況に応じて多様な形態を取ることを許し、その形態には弱い仮定しか課していない。では、現実や実験室における様々な交渉状況で人々(被験者)が実際に採用する交渉プロトコルはどのようなものなのだろうか?そして、それらの交渉プロトコルの下でどのような交渉結果が実現しているのだろうか?竹澤氏は、氏自身を含む複数の社会心理学者や進化心理学者が行った実験室実験の結果を紹介し、これらの問いに対するいくつかの仮説を提示した。

当日の参加者はVCASIフェローの青木昌彦(比較制度分析)、宇井貴志(ゲーム理論・ミクロ経済学)、川越敏司(実験経済学)、安田洋祐(ゲーム理論・ミクロ経済学)をはじめ、経済学、ゲーム理論、社会/進化心理学などを専門とする実務家、研究者、学生などだった。


ビデオあり: 
no
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