Language: 日本語 English

立憲主義のゲーム理論的分析

Author(s): 
河野勝・広瀬健太郎
日付: 
Wed, 2007-08-01
Abstract: 

本稿では、ゲーム理論の分析手法を用いて、立憲主義(constitutionalism)がなぜ成立するのか を明らかにすることにある。立憲主義をどう定義し、またその意義をどう評価するかには、もちろんさまざまなアプローチがありうる。本章では、J.ルーベン フェルドの根源的な問題提起を受けて、書かれたテキストとしての憲法へのコミットメントが、立憲主義の核心であるという立場をとる(Rubenfeld 2001)。「話すこと」に対置する形で「書かれること」のユニークさおよびその意義を強調するのは、立憲主義と民主主義とのあいだの緊張関係を正しく捉 えることが何より重要であると考えるからである。民主主義とは、時間の流れの中の各時点において、「話し」、「討議し」、多数派の「声」がなんであるのか を見きわめることを意思決定の基礎とする政治体制である。これに対して、立憲主義とは、「書かれること」で時間を超えて存在する憲法に、統治する者が自ら コミットすることで成立する政治体制である。民主主義的な政治体制のもとでの統治者、すなわち多数派にとっては、憲法とは自らの統治の仕方を長期にわたっ て体系的に制約することになりかねない一片の文書である。なぜなら、通常民主主義のもとでは、一般の法律は議会での単純多数決によって成立するのに対し、 憲法を改正するには議会での特別多数決や国民投票といったより厳しい要件を満たさなければならないからである。であるならば、なぜ民主主義下の多数派は憲 法制定にそもそも同意することがあるのか。またなぜ多数派は、少数派にも等しくその効果が及ぶ基本的権利の保障を、憲法を通して約束することがあるのか。 民主主義であると同時に立憲主義である国家は多く存在するが、実は、民主主義のもとで立憲主義が成立していることはきわめて不可解な事態だといわなければ ならない。今日の立憲主義を正しく理解しその意義を適切に評価するためには、こうした原理的問題が解明されなければならない。本稿では、その解明のため、 ゲーム理論に基づく分析と考察を用いる。

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